■ポケモン同人誌事件の切り口

(1999.9.4開始)


 この事件は、直接的にも間接的にも、あまりにも多くの問題を含んでいるためか、いろいろな切り口で議論することが可能です。しかしながら、それがあだになって、議論が拡散したり、かみ合わなくなってくることがしばしば起こっています。見ていると、議論がかみ合わない理由は以下の例が多いようです。

 そこで、私が思いつく限りの切り口を列挙してみました。すべての問題について、私自身が考えを進められるといいのですが、あまりにも切り口が多すぎて難しいというのが正直な所です。ただ、いくつかの切り口については、今後も私のサイトで考えていきたいと思います。また、それぞれの問題について得意な人が議論を深めてくれるとうれしいなと思います。

 まだ執筆中のものもけっこうありますが、とりあえず公開します。また、「こんな切り口もあるんじゃないか?」という意見がありましたら、教えてください。随時追加していきたいと思います。


事件に関する直接的な問題

●逮捕された女性のどのような部分が問題視されて逮捕に至ったのか

 「どのような容疑なのか」ではないことに注意してください。本来、著作権違反は親告罪(著作権を持っている人が自ら告発する必要がある)です。ポケモンの同人誌については、逮捕された女性だけが作っていたわけでもないし、彼女の同人誌が同人誌即売会で格段に目立っていたわけでもありません。
 そんな中で、彼女だけが刑事告発の対象になるには、それなりの(告発する側の)理由があったはずです。それを明らかにしていくことで、告発する側が同人誌についてどのような部分を気にしているのか、ということを知る手がかりになると思います。

 

●問題となった同人誌が、著作権違反(複製権)といえるのかどうかの問題

 逮捕のきっかけとなったポケモンの同人誌が著作権に触れる内容であったのか、また触れる要素があったとして、それは複製権の侵害といえるものなのかどうかの問題。
 ただ、現実にこの議論を深めていくことが難しいのは、著作権に今のパロディ同人誌のようなキャラクターの使われ方がまったく想定されていないこと、そして、ほとんどの人が問題の同人誌を見る機会がないということですね。
 気をつけなければならないのは、問題となった同人誌が著作権違反かどうかという議論と、パロディ同人誌全体が著作権違反かどうかの議論は分けなければならないということです。

 

●逮捕された女性に対する扱いに人権的な問題はなかったのか

 例えば、逮捕の後の20日間の勾留は妥当だったのか、また、取り調べの方法に問題がなかったのかといったことは、逮捕された女性の容疑や罪とは切り離して議論すべき問題です。逮捕されれば、どのような扱いでも受けていいわけではありません。


同人誌界全体に関連する問題

●パロディ同人誌の定義問題

 いわゆるパロディ同人誌は、「パロディ」も「同人誌」も、広辞苑などに載っているような定義から大きくずれていますし、その内容は非常に広範囲なものになっています。にも関わらず、多くの議論が「自分の見たパロディ同人誌」「自分の聞いているパロディ同人誌」「自分のやっているジャンルのパロディ同人誌」の視点からしか行われていません。
 パロディ同人誌とはどのようなものなのかを定義した上で、全体視点なのか、その一部の形態を問題にしているのかという区分をはっきりさせる必要があると思います。

 

●パロディ同人誌が著作財産権を侵害するかどうかの問題

 現行の著作権において、パロディ同人誌がオリジナル作品の著作権者の経済的利益を損なっているかどうかという問題です。この問題も、パロディ同人誌の内容が広範囲なこと、また、前述したように、著作権に今のパロディ同人誌のようなキャラクターの使われ方がまったく想定されていないことがあって、議論の難しいテーマかもしれません。
 パロディ同人誌すべてが著作者財産権を侵害すると考えられるのか、またはすべてが違反しないと考えられるのか。もしくは、一部は違反で一部は違反でなく、その場合、どのような形態のパロディ同人誌が侵害すると考えられるのか。こういったことを、「パロディ同人誌の定義」と照らし合わせながら考える必要があると思います。自分の知っているパロディ同人誌を、よく調べもしないで安易に全体論に適用するのは危険です。

 

●パロディ同人誌と著作者人格権の問題

 著作権には、上記の著作財産権の他に、著作者の人格を守る「著作者人格権」があります。これも、「著作者財産権」と同じように、パロディ同人誌がパロディ同人誌がオリジナルの作品の著作者人格権を侵害することはあるのかないのか、あるとしたらどのような場合かということを考えていく必要があるでしょう。

 

●パロディ同人誌は著作権の精神においてどうあるべきか

 上記2つの問題が、現行法に照らしてパロディ同人誌はどういう扱いになるのか、に対し、この問題は、そもそも著作権の精神に照らし合わせた場合に、パロディ同人誌というものはどう位置づけられるのだろうか、という問題です。
 著作権の目的は、著作権法によると「著作権者の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与すること」(著作憲法第一条)と書かれています。つまり、著作権者の権利の保護は目的達成のための手段であり、著作権が目指す最終目的は「文化の発展」なのです。
 そう考えた場合に、パロディ同人誌は、文化の発展にとってすべて役に立つものなのか、すべてが意味のないあるいは有害な物なのか。あるいは、役に立つものと有害なものが混ざっているのか。だとしたら、どのようなものが役に立つもので、どのようなものが有害だといえるのか。こういった著作権の原点に立ち返った議論もあっていいのではないかと思います。

 

●なぜあえて他人のキャラクターを利用してパロディ同人誌を描くのか

 パロディ同人誌を知らない人にとって一番不思議なことは、「なぜオリジナルではなく、わざわざ既存のキャラクターを題材にパロディ同人誌を描くのか?」ということのようです。そして、このことについてはパロディ同人誌の描き手の側も、深く考えたりちゃんと説明したりすることをあまりやってこなかったのが現状ではないでしょうか。このギャップは埋めていく必要があると思います。

 

●表現の責任についての意識問題

 たとえ、同人誌であっても、不特定多数の人が手に取ることのできる印刷物である以上、表現についての責任が発生します。しかしながら、最近の意識は、「みんなやっているから」「読者が面白がってくれるから」という感覚のみで、表現することで必ず責任が発生するということについて、あまりにも無自覚な人が多かったのではないでしょうか。
 これが、自覚はしていたが具体的な知識についてはやや乏しかった、とか、ほとんどの人は自覚しているが一部に無自覚な人がいる、という状況なら、まだ個人個人の意識問題なのかもしれませんが、残念ながら私の印象では、無自覚な人の方が多いと感じるのです。
 なぜ、このような状況が起こっているのかを考え、表現の責任について自覚を高めていく方法を議論していく必要があると思います。


以下執筆中

●今回の事件において事前警告なしでの刑事告発による逮捕を行う必要があったのかどうかという問題

●今回の逮捕において著作者人格権侵害を容疑にしていないにも関わらず、それが一番の逮捕理由であるかのように伝えられている問題

●パロディ同人誌においてオリジナルキャラクターとその作者に対する敬意が必要かという問題

●性的表現を含む同人誌に対するモラル問題

●性的表現を含む同人誌と流通経路の問題

●同人誌とアマチュア、プロの線引き問題(売上はどうあるべきかという利益問題)

●同人誌をやる人たちの社会的行動やモラルなどの人格問題


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